環境問題に関心が高まっている昨今、消費者である私たちは企業の環境活動に、より注目するようになりました。今回は、セブン‐イレブンの加盟店様と本部が一体となって「環境」をテーマに社会貢献活動に取り組むことを目的に設立された一般財団法人セブン‐イレブン記念財団(以下セブン‐イレブン記念財団)に注目。セブン&アイグループの活動を継続して取材しているライター吉田が、セブン‐イレブン記念財団の理事長と事務局長にお話をうかがいました。
志のあるセブン‐イレブンのオーナーが活動の輪を広げた
皆さんは、セブン‐イレブン店舗のレジ横に設置されている募金箱を見かけたことはありますか。お客様から寄せられた募金が、どのようなことに活用されているのか関心のある方は、少なくないかと思います。今回は、このお客様からの募金と、(株)セブン‐イレブン・ジャパン、企業、団体、個人の皆様の寄付金をもとに社会貢献活動に取り組んでいるセブン‐イレブン記念財団をご紹介したいと思います。
セブン‐イレブン記念財団の設立は1993年(前身:セブン‐イレブンみどりの基金)。セブン‐イレブン・ジャパンの創立20周年記念事業として、セブン‐イレブンの加盟店様と本部が一体となり、環境をテーマに社会や地域に貢献することを目的に設立されました。
「当時はセブン‐イレブンが全国的に広まりつつある時代で、普段買物をしてくださるお客様や地域で生活している皆さんに少しでも貢献していきたいという考えから活動がスタートしました。環境活動を通して近隣の皆さんと良好な関係を築き、その地域の一員になろうという目的があったわけです」
そう振り返るのは、セブン‐イレブン記念財団の理事長であり、セブン‐イレブン豊洲店のオーナーでもある山本憲司さん。全国各地の加盟店オーナーの方々が主体性を持って清掃活動の輪を広めていきました。その後、環境団体への助成とつながっていきました。その背景について、山本さんは次のように語ります。
「オーナーたちは、コンビニエンスストアが社会的に認知されていなかった時代に意思を持って業界に飛び込んだ、バイタリティーに溢れる方ばかりでした。約20年の間に各人が努力して地域での営業基盤を築き上げ、次の一手として本業とともに社会にも貢献しようという意識が強かったため、セブン‐イレブン記念財団の活動が広まっていったのだと思います」
環境活動は各地域の特性・必要性に沿って進められてきました。たとえば宮城県では植林を行い、育った木を伐採して燃料として利用するといったことなども行っており、志を同じくするNPO法人の協力も欠かせませんでした。
そして、2021年3月には環境省大臣官房総合政策課及び一般社団法人環境パートナーシップ会議と「環境保全及び協働取り組みに関する協力協定書」を締結。三者が協力して環境保全やSDGsに関する取り組みを促進し、地域社会の持続的な発展に寄与することを誓いました。
環境問題や地域の清掃活動などの取り組みは、すべて募金や寄付金をもとに実施しています。2年後に30周年を迎えるセブン‐イレブン記念財団ですが、たくさんの皆様からの募金によって長きにわたり継続してきた取り組みとは、どのようなものなのでしょうか。
セブン‐イレブン記念財団の四つの事業
セブン‐イレブン記念財団の活動は、時代のニーズに即した形で展開され、徐々に規模を拡大。現在は、『環境市民活動支援事業』bet365 中文事業』『災害復興支援事業』『広報事業』の四つの事業を主軸としています。
それでは、事業の内容に関して詳しく触れていきましょう。
まずは『環境市民活動支援事業』です。地域に根差した環境市民団体に対し、自然環境保護などの市民が主体となって行う活動を助成金という形で支援する「環境市民活動助成」。地域の環境NPOの構築・確立をめざす「NPO基盤強化助成」、自然環境保護や気候変動対策、脱炭素化などをめざす「活動助成」、緑と花咲く街並みをつくる活動への「花と緑の助成」、ごみのない環境をつくる活動への「清掃助成」があります。助成先を選定する際の仕組みについて、山本さんは「有識者による専門審査会と最終審査会の二審査制をとっており、我々が関与せずに公平性・透明性を重視して選定しています」と、語ってくれました。
提供:静岡・海辺づくりの会
次に紹介するのは、bet365 中文事業』です。美しい自然を次世代に継承するため、さまざまな団体と力を合わせて自然保護に尽力。自主活動としては、地球温暖化防止や生物多様性保全を目的とする「セブンの森」づくりや、地球環境をよくする働きを持つとされるアマモを再生させて、東京湾の環境改善を目指す「東京湾UMIプロジェクト」に参画。さらに、大分県玖珠郡九重町で「九重ふるさと自然学校」を、東京都八王子市で東京都と協働して「高尾の森自然学校」を運営し、自然を学べる場を提供しています。
セブン‐イレブン記念財団の事務局長である森永仁さんは、財団の活動について次のように話します。
「一例を挙げると、東京湾UMIプロジェクトに参加したとある地区のオーナーさんは、活動に参加したことで地元の環境を良くしたいという思いが芽生え、セブン‐イレブン記念財団が助成している環境団体に更に興味をもたれたそうです。オーナーさんに、もっと地元の環境を変えようという心の変化があり、環境活動への参加や今まで以上に地域に溶け込もうとされています。そんな変化のきっかけこそが大事なのかなと考えています」
加えて、全国各地の環境団体との連携が強化され、「全国アマモサミット」の開催にもつながりました。
アマモは海草の一種で、アマモをはじめとする海草類によって形成された藻場をアマモ場といい、アマモ場には、海草に付着する微生物を採餌するためにたくさんの水生生物が集まります。そのため産卵や幼稚魚が育つ場となり、「海のゆりかご」とも呼ばれています。
また、アマモは海中の栄養を吸収し、酸素を生成して海水を浄化し、海中および大気中のCO2を吸収することから、温室効果ガスの削減への効果が期待されています。このアマモの成育によってもたらされるメリットが非常に多いことを踏まえ、セブン‐イレブン記念財団は、アマモ場の保全活動にも積極的に取り組んでいます。
森だけではなく、海に関わる環境活動も推進し、多様な取り組みを実施することで美しい自然を守る活動を続けています。
三つ目の『災害復興支援事業』では、甚大な被害をもたらした自然災害の被災地を復旧するための活動を実施。「東日本大震災復興支援」をはじめ、義援金活動も積極的に行っています。漁業支援や海岸清掃などを行う「東日本大震災支援プロジェクト」のボランティア参加者はじつに多く、一般参加者まで含めると、これまでに約2,000名の方が参加しています。
また、大規模な地震や台風、噴火などの自然災害によって、深刻な被害が発生した際には、セブン‐イレブンの店頭に置かれている募金箱を利用して、義援金募金活動を素早く行い、被災者または被災地への支援になるよう被災された自治体や行政府などにお届けしています。
ボランティア参加者について、森永さんはこう話します。
「東日本大震災を契機に、人々のボランティアに対する意識が大きく変わり、困っていらっしゃる方がいると、少しでもお役に立ちたいという思いをすぐに行動に移す方が増えているように感じます。海岸の清掃作業などはとてもハードですが、皆さん、充実感を得て帰られる方が多いですね。地元の方たちのつながりの強さに感動したという声もよく聞きます」
このような活動を周知するのに大切なのが事業の四つ目となる『広報事業』です。環境イベントの支援、自然環境をテーマとする季刊誌『みどりの風』の発行、そしてbet365 中文ムぺージやSNSでの情報発信に力を入れています。
中でも注目したいのは、広報誌『みどりの風』です。毎号、自然が身近に感じられるさまざまな特集を組んでおり、その内容の濃さが評判を呼んでいます。また、森林認証制度に即した再生紙を使用しているのに加え、封筒を使わない簡易包装システム「エコメール便」を採用しており、配送においても環境に配慮しています。ちなみに、発行部数は約2万5,000部で、助成先団体様をはじめ、一部の行政や希望される個人の皆様、セブン‐イレブンの店舗にも配布されています。
Web全盛の時代に紙媒体を発行する意義について、森永さんは「お客様からお預かりした募金を広報誌という形で手元にお届けし、環境に興味を持たれている皆様に読んでいただきたいという思いがあります。また2020年より、bet365 中文ムページから定期送付の希望も申し込めるようになりました。」と、語ります。
これらの広報活動は、多くの人々が自然環境への理解を深めるきっかけになっていると言えるでしょう。
誠実かつ真摯な取り組みがあれば結果につながる
長年にわたりさまざまな活動を継続できている理由について、森永さんは次のように話します。
「私たちの重要な目的の一つは、大切な募金や寄付金を地域に還元し、より良い環境を次世代につなげていくことです。各地域において本気で環境を変えようとしている環境団体に対し、我々が心を通わせて支援を続けることで、地元の方たちとの連携がより強まっていったという実感があります」
「お店は地域に溶け込んで商売をされていますが、セブン‐イレブン記念財団の活動においても、地元に根を張り、さまざまな環境活動に誠実かつ真摯に取り組んでこられたオーナーさんの存在はとても大きいと思います」
ここ数年、SDGsという言葉が急速に社会に浸透し、さまざまな環境問題がメディアで取りあげられるようになりました。セブン‐イレブン記念財団の活動も時代にマッチしていると言えますが、およそ30年前から環境にまつわる事業を展開してきたことが、現在の充実した活動につながっているのかもしれません。森永さんは「セブン‐イレブン記念財団の活動を通して環境について考え、環境問題に取り組むきっかけになっていただけたら嬉しいですね」と、語ってくれました。
コンビニエンスストアのレジ横にある小さな募金箱に集まった支援が、このように身近な社会貢献活動にしっかりと使用されていることを知りました。自分ではなかなかできない活動をこの募金を通じて気軽に参加できることはとても意義のあることだと思います。ライター吉田もこうしたワンアクションを日ごろから行うことで社会貢献に少しでも参加していきたいと心から感じました。
次回は、先述したbet365 中文活動』の一つである「高尾の森自然学校」について、詳しくご紹介します。
Photographer:山北茜
セブン‐イレブン豊洲店オーナー
山本 憲司
事務局長
森永 仁