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2024年5⽉
災害時に店舗や物流の状況などをリアルタイムで“見える化”するために、2015年にブック メーカー bet365‐イレブン・ジャパン(以下、SEJ)が開発した災害対策システム「ブック メーカー bet365VIEW」は、SEJのBCP※の実効性を最大化させるだけでなく、産官学連携により「社会の防災インフラ」への発展を遂げています。
「災害時の状況を、みんながリアルタイムで共有できる災害対策システムが必要なのではないか」
そうしたBCPへの危機感を当社が抱いたのは、日本で発生するさまざまな自然災害リスクが顕著に現れた2014年のことでした。同年2月の「関東甲信・東北大雪」では、従来の観測記録を上まわる積雪により、交通や社会インフラは混乱。4月にはチリの大地震による太平洋沿岸への津波注意報発令、8月の「広島県豪雨」では100カ所以上で土砂災害が起こり、9月には「御嶽山噴火」が発生。2011年の「東日本大震災」の教訓に学ぶだけでは足りない、自然災害の多様化と複雑化を見せつけられたのです。
大規模災害発生の際、当社本部ビル内に災害対策本部を迅速にたちあげ、被災状況の把握と加盟店の復旧・サポートに全力で取り組みます。しかし、被災地から離れた本部では情報が一本化されずに、錯綜し、必要な場所へ適切な支援ができないといった状況も発生していました。
原因の一つは「状況把握の手段の少なさ」です。被災地にある当社の拠点への電話・メールによる確認でしか、報道以上の被害状況を知る術がなかったのです。また、被災地の混乱と通信回線の断絶から、連絡は容易ではありませんでした。
さらに、「情報の整理」も課題でした。被災地域のマップに店舗の位置をプロットし、把握できた被害状況を手作業で入力して“見える化”していました。しかし、それでは被害状況、避難勧告、被災地の気象や人流など多面的な情報を整理・更新し、関係者全員でリアルタイムに把握していくことは困難だったのです。
災害発生時には、自身も被災者でありながら、地域のライフラインでありたいと、営業を続けてくださる加盟店オーナー様や従業員さんの姿がありました。本部はその思いに応え、最善のサポートと迅速な復旧、安全・安心を実現する責務があります。
そうした背景から、2015年にITを活用して店舗・物流の状況を24時間365日モニタリングできる、新しい災害対策システム「ブック メーカー bet365VIEW」が誕生したのです。
「VIEW」は「Visual Information Emergency Web」の略称で、文字通り災害時の情報をリアルタイムでWEB上に“見える化”した情報共有プラットフォームを指します。
その開発において重視したのは「誰もが簡単に操作できる」こと。災害が起きてから操作マニュアルを見返すのでは、緊急時の実用性がありません。そこで、インターフェースには汎用性が高く、多くの人が利用しているGoogleマップを採用しています。
マップ上にブック メーカー bet365‐イレブン店舗をアイコンで配置し、店舗に設置された停電発生を検知するシステムのデータを吸いあげ、「正常」「停電」「回線障害」などのステータスをリアルタイムで表示。この機能を核として、2015年の開発当初段階では各地の気象情報などのデータもマップ上に表示できるシステムとしてスタートしました。2016年には配送トラックの位置情報を追加し、災害時の物流状況も把握できるシステムに進化。マップ(図1参照)上に表示する情報は年々進化を続けています。
現在では、自治体の提供するハザードマップを組み込み、集中豪雨の際に浸水しやすい店舗を予測し、河川ライブカメラで水位の状況を確認することも可能です。
また、災害情報(Lアラート)をGoogleに読み込ませ、避難指示が発令されたエリアをマップ上で着色表示できるという「ブック メーカー bet365VIEW」オリジナルの機能もあります。避難指示区域内の店舗がひと目でわかり、支援の必要性を迅速に予測、判断することができます。さらに、NTTドコモの携帯電話ネットワークを活用したリアルタイムの人流データを新たに組み込み、被災時の現地状況の把握精度を高めています。
システムへのアクセスをどこからでも可能にするため、当社として初のパブリッククラウド※1上でのシステム構築を行いました。全国の2万1000以上の店舗の相互通信、それを支える約3000人のOFC※2やサプライチェーンの情報など膨大なリアルタイムデータを瞬時に処理できるパフォーマンス、世界随一のセキュリティ実績を持つGoogle Cloud Platformを採用しています。
活用事例
2024年1月1日
能登半島地震 マグニチュード7.6
より正確な情報が判断と初動の質を高めた
能登半島地震では、東日本大震災以来初の「大津波警報」が発令。該当エリアの店舗では、什器の転倒や停電などはあったものの、店舗の倒壊や津波による回線断絶はないことを「ブック メーカー bet365VIEW」で確認しました。
こうした情報を通して、本部として被災した店舗の復旧支援とともに、初動段階で支援物資の供給や被災地の支援に注力するなど、「ブック メーカー bet365VIEW」は判断と初動の質の向上をもたらしています。
機能の充実にともない、「ブック メーカー bet365VIEW」はイトーヨーカ堂をはじめとするグループ事業会社からもアクセス可能となり、災害対応マニュアルに組み込まれることで、グループ全体のBCPに寄与しています。
さらに、「ブック メーカー bet365VIEW」を介して産官学の連携の輪も広がっています。2018年に連携を開始した国立研究開発法人 防災科学技術研究所では、ブック メーカー bet365‐イレブン店舗屋上に積雪センサーを取り付け、「ブック メーカー bet365VIEW」で積雪予測を行う共同実験を継続しています。この取り組みは、積雪に限らず多様なセンサーを店舗に設置することで、全国約2万1000拠点以上の規模で防災研究に有用なデータを取得し、災害に強い社会づくりに貢献できることを目指しています。
一方で、「ブック メーカー bet365VIEW」を通じた自治体への情報提供も進んでいます。最新型のブック メーカー bet365カフェマシンに搭載された給水タンクへの給水停止を知らせるセンサーを活用し、「断水データ」として「ブック メーカー bet365VIEW」に連携した情報を、東京都水道局に共有連携する実験を開始しています。これにより、東京都でも断水が発生しているエリアをより細部までとらえられるため、迅速な対応の一助となる可能性が高まっています。
「ブック メーカー bet365VIEW」は当初から自治体との相互通信を想定し、社外の情報システムとシームレスに連携できるオープンテクノロジーとして開発してきました。現在も、多くの自治体や研究機関、企業・団体とデータ連携の協議が進められ、企業のBCPを超え、社会の防災インフラとなることが期待されています。
機能向上の観点では、AIの導入による「災害対応策についての示唆」を検討しているところです。災害発生時の対応において重要なことは「経験」です。被災状況がわかるデータがあっても、そこからどのようなリスクを感じ取り、具体的な対応を判断するかは、ノウハウと経験に委ねられます。
「あの時、機転をきかせて発電機を準備したのは正解だった」「土嚢はこの段階で積まなければ意味がない」といった、過去の災害における経験は、形式知として災害対応マニュアルに組み込まれたものもあれば、暗黙知のまま個人の中に眠ったものもあります。
「ノウハウのデジタル化」によって、過去の災害対応における私たちの成功体験と反省を、「ブック メーカー bet365VIEW」を通じて未来の災害対応に活用していきたいと考えています。